「人みな、生きて死ぬ」(南医師会から市民の皆様へ)

「日本プライマリ・ケア学会第16回近畿地方会・ウェブ抄録集」
第2分科会「介護保険」    
  明石基幹型在宅介護支援センターの活動について −現状と課題−
         
  堺市医師会介護老人保健施設「いずみの郷」の現況と今後の課題
         
  介護老人保健施設におおける転倒事故防止対策への取り組み(第2報)
         
  介護者自身の食事に関する体験学習の欠如のため脱水による入院を繰り返す患者とその家族への支援
      −訪問介護との協働による実践報告−    
         
  在院医療から在宅介護への移行における現況と問題点    
      −精神症状を伴う重篤な肺炎症例を通じて−    
         
  長期臥床者実態調査と在宅介護(第2報)
 
 
 
 
  介護老人保健施設における入所長期化の現状と対策
 
         
  介護老人保健施設における訪問指導の重要性
 
 
 
  介護保険制度の中での薬剤師の関わり
 
 
 
  介護保険下における医師と介護支援専門員の連携の現況と問題点の検討
 
 
 
  平成12年4月作成ケアプラン51件のその後
 
 
 
 
  介護保険制度の問題点等について −大阪府の現状−
 
 
 
 
  介護保険制度における認定調査票のコンピューター入力による合理化

「日本プライマリ・ケア学会第16回近畿地方会・ウェブ抄録集」
 
2−1
明石基幹型在宅介護支援センターの活動について −現状と課題−
   
明石基幹型在宅介護支援センター
長田 貴
   
石井 久仁子/尾松 芳輝/姉崎 赳夫
   

明石市は、兵庫県南部の瀬戸内海に面した東西約15kmに伸びる地域である。平成14年4月現在で人口約29万人。高齢化率は15%を超えている。
 平成11年度には、13中学校区全てに地域型在宅介護支援センターが設置され、各地域における介護保険や保健福祉サービスの定着とその普及が可能となっている。そのような中で、明石市医師会が市の委託を受けて平成13年10月に明石基幹型在宅介護支援センターが開設された。実働は、管理者(ソーシャルワーカー)と保健師の2名である。
 明石基幹型在宅介護支援センターは、

  1. 地域ケア会議を通して明石市要援護者保健医療福祉システムのネットワーク強化。
  2. 地域型在宅介護支援センターへの支援と連携。
  3. 居宅介護支援事業者への支援。

を活動の柱としている。今回は、その活動状況とともにケアマネジメントリーダーの役割を踏まえて、今後の展望と課題について報告する。

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2−2
堺市医師会介護老人保健施設「いずみの郷」の現況と今後の課題
   
堺市医師会
藤田 環
 
西川 正治/村田 省吾/日下 高志/玉井 良胤
   
いずみの郷
  松浦 哲志
   
  吉田 園子
     本施設は、平成12年7月に堺市医師会が開設した入所定員80人、通所定員40人の老人保健施設であり、また、大阪府下では唯一の医師会立であり、独立型である。
 本施設建設の発端は、高齢者の増加に伴う要介護の問題が大きな課題になりつつあった平成3年に始まり、また、市立堺病院建替え、増床の際に、大阪府医療審議会の付帯条件の中に老人保健施設の設置が盛り込まれた事による。その後、本件について堺市医師会と堺市との間で検討され、平成9年、両者の間で設立についての基本合意がなされ、堺市医師会は公設民営という公共性を帯びた本施設を設立、運営するところとなった。
 本施設は、堺市医師会が運営する訪問看護ステーション、ケアプランセンター及び在宅介護支援センター等の事業との密接な連携で、かかりつけ医の在宅ケア活動の後方支援施設として活動している。現況と今後の課題などについてのべる。
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2−3
介護老人保健施設における転倒事故防止対策への取り組み(第2報)
 
介護老人保健施設はまさき1
榊原 多恵
   
飯塚 哲也/川西 由起子/福嶋 新悟/佐藤 美絵/松本 達士/
   
島崎 恵子/斎藤 三冬/前田 幸夫/濱崎 憲夫
   

 施設内で見られる事故としては転倒事故が多く、筋力低下や脳梗塞後遺症等による四肢麻痺を有する入所者が、自力移動時に転倒する場合が多くみられる。当施設においても開設当初よりベッドを低く設置することや、滑りにくい床にする等ハード面は勿論、転倒の可能性の高い入所者に対しては、見守り介護時間を増やす等の対策を実践してきた。しかし事故件数減少は若干見られるものの、同一入所者が再度転倒事故をおこす例や、骨折等により他の医療機関に転院され加療を受ける重症例も経験し、対策として十分であるとはいえなかった。前回我々は、転倒事故についてその時間帯や程度、事故者の疾患、介護度等の分析をすることにより対策を講じ、それらの対策を介護者全員に徹底し、転倒事故数が減少した事を報告した。引き続き分析を続け、今回はその転倒事故時に居合わせた介護者のとった行動、介護人数、救急処置、またその経過についても報告する。

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2−4
介護者自身の食事に関する体験学習の欠如のため脱水による入院を繰り返す患者とその家族への支援
      −訪問介護との協働による実践報告−    
 
阿部野区医師会北訪問看護ステーション
桑本 典子
     

 

森山 ゆかり
     家族看護は、多くの看護領域で取り組まれている。なかでも訪問看護は家庭に出向き、家族が主体的に患者の健康問題について解決できるよう、意識的・効果的に家族への看護を展開する必要がある。今回取り上げる脱水による入院を繰り返す老人の訪問看護では、その原因と介護状況に娘の体験学習の欠如と問題のある信念が影響している事がわかった。また、介護のために娘がマイナスの影響を受けている事を知る事ができ、娘への看護援助が不可欠であった。専門的な観察と働きかけで老人の可能性を本人と娘に示せたこと。娘の気持ちを発想の転換で代弁したり、娘に対して介護の状況や役割を評価し賞賛できたことが、娘自身が変化していける条件作りとなったと考えられる。訪問介護との協働により老人の回復を早めるだけでなく、娘の心身の健康も高めることができ、老人と娘のQOLが共に維持・向上することができたので、ここに発表する。
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2−5
在院医療から在宅介護への移行における現況と問題点    
      −精神症状を伴う重篤な肺炎症例を通じて−    
 
NPO法人 和歌山ケアマネージャーの会
米山 真理
   

 医療保険制度の改革に伴い、入院期間の短縮化を推進する病院が増加し、亜急性期の状態や、問題点の未解決なままで退院となるケースが増えている。本人の状況と家族の介護力とバランスが良いケースでは、介護保険の限度額内での在宅サービスを利用することで、ある程度の対応が可能である。しかし、譫妄や痴呆などの精神症状を伴うケースでは、家族の心身の負担が大きく、施設サービスの適応が考えられるが、その利用については、現実として、対応できる施設も限定され、空床も少ないことが多く、既存のサービスだけでは、対応が困難となる。
 今回、肺炎を発症して、譫妄状態のままで退院となったため、身体的疾患の治療とともに精神症状として、昼夜逆転、介護への抵抗、転倒等にて、常時の見守りと介護を要し、在宅介護での対応が困難となったケースを経験し、在院医療と在宅介護との連携・継続性という観点において、種々の問題点と今後の解決すべき課題を認めたため報告する。

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2−6
長期臥床者実態調査と在宅介護(第2報)
 
 
神戸市医師会 老人保健・在宅ケア部
槙村 博之
 
入江 正一郎/妹尾 栄治/松田 俊雄
     在宅医療への取り組み方を考慮する際に、在宅患者を取り巻く様々な要因をできるだけ広汎かつ客観的に把握することは極めて重要と思われる。
 神戸市医師会では昭和56年以来毎年会員を対象としたアンケート調査を実施し長期臥床者の実態把握に努めてきたが、今般平成13年度の調査結果をもとにそれらの要因の分析を試みた。
 すでに本年6月に開催された第25回本学会総会において、寝たきりの原因となった疾患の頻度が男女間で相異すること、さらに寝たきりの原因となった疾患と現在医療の対象となっている疾患に乖離を認めること、また介護を担当する家族の側も27%が70歳以上であり30.4%が自ら要介護認定の該当者であることなどを報告したが、今回は更に神戸市内9区において、各区毎の特質あるいは各区相互間の相違点の有無について検討を行ったので、結果を報告する。
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2−7
介護老人保健施設における入所長期化の現状と対策
 
 
介護老人保健施設八尾徳州苑
北村 尚洋
 
中塚 充紀子/酒井 敬
   

【目的】
 介護老人保健施設における入所長期化の現状と対策について検討した。
  対象と方法:調査対象は平成13/4〜14/3の入所者160名、
          平均年齢83.8歳、平均介護度3.2
【結果】

  1. 全退所者126名の自宅復帰率は47.6%、平均在所日数は120.6日であった。退所先は在宅60名、特養16名、医療機関34名、入所中34名、その他10名、死亡6名である。
  2. 入所目的別に在宅復帰率をみると、リハビリ目的40%、痴呆の安定29%、家族の休養54%、介護者不在58%、療養目的16%、サービス調整68%であった。

【まとめ】

  1. 入所時、家族の真意の予測が困難で、退所先が変化するのが現状である。
  2. サービス調整、介護者不在、家族の休養、リハビリ目的の順に在宅復帰率が高い傾向がある。
  3. 支援相談員として、在宅復帰に向けて面接技術の向上、入所目的の分析および家族の意向の変化に応じた迅速な対応が重要である。
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2−8
介護老人保健施設における訪問指導の重要性
 
 
鶴見老人保健施設ラガール
稲村 千穂子
        下條 富美子
     介護保険制度にある訪問指導には、通所リハビリステーション利用者に対しての訪問リハビリテーション指導と入所者に対する退所前後の訪問指導がある。訪問リハ指導とは、通所リハ利用者に対し月一回を限度とし、実際に利用者宅を訪問し、通所リハケアプランの作成、見直しを行う為の評価をするものである。又退所前の訪問指導は入所者が退所し自宅に帰るにあたり、住宅環境、介護力などの評価を行い、住宅改修や在宅サービスの必要性などを検討する。退所後には、在宅生活がスムーズに行われているかどうか、修正する点があるかどうかの評価を行う。老人保健施設は中間施設であり、在宅での生活を想定したプランを立てる必要がある。そのため入所者、通所者の自宅を訪問し、在宅での様子を評価することは非常に重要なことである。今回当施設で実施している訪問指導について報告したい。
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2−9
介護保険制度の中での薬剤師の関わり
 
(社)大阪府薬剤師会 居宅介護支援事業所
荒井 治代
     高齢化、疾病構造の変化、患者のQOL向上指向といった様々な要因によって、社会的入院から在宅療養になり、不自由を感じながら生活している高齢者が増加し、様々な問題が発生している。医療、介護に係わる職種は医師、歯科医師、薬剤師、保健師、看護師、理学療法士、作業療法士等があり、その中で、病院内の薬剤師は病棟業務を行うようになって、患者とある程度接近するようになったが、それでも薬剤師は、患者に背を向けて医師の処方せん通りに薬を調剤する人というイメージがある。最近かかりつけ薬局 又大阪府薬剤師会居宅介護支援事業所の薬剤師がケアマネージャーとして利用者の家庭を訪問し、体調を知り、主治医との連絡をとり、生活の問題点を知り、理解し、QOL向上に助力している。これは、薬剤師が目指す在宅業務に共通するものであり、薬剤師も積極的に介護保険に参加し、医療と介護のコーディネーターの役割を担うことができたらと思っている。
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2−10
介護保険下における医師と介護支援専門員の連携の現況と問題点の検討
 
平野区医師会ケアプランセンター
藤原 直子
 
大部 八重子/立石 容子
   

【目的】
 平成12年4月より施行された介護保険では、介護支援専門員に各種サービスの調整役としての中心的機能が求められている。しかし、居宅での介護支援には、異なった複数の機関から多くの職種の人間がかかわるため、各サービス機関の連携に大きな労力を要する。特に医師と介護支援専門員間の連携は、高齢者の有疾率の高さという観点からも最重要課題であるが、基本的な立場や医療と生活という異なった角度からのアプローチであるため、相互の認識に誤解が生じやすく、連携活動に大きな支障をきたす場合もある。今回、医師、介護支援専門員間の連携についての意識調査を行い、その連携活動の現状と問題点の把握を行ったので報告する。
【結果】
 医師と介護支援専門員の双方が連携の必要性を感じながら、約6割が現状は連携不十分と感じていた。連携の有用性は多大であり、相互の役割の再認識と介護支援専門員からの連携活動の積極性が必要であると思われた。

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2−11
平成12年4月作成ケアプラン51件のその後
 
 
居宅介護支援事業所(株)高城 タカジョウメディカル東山店
川井 雅子
     介護保険制度が平成12年4月に導入された。同時に、薬剤師である私はケアマネジャーという仕事にたずさわり、利用者が可能な限り居宅においてその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう居宅サービス計画(ケアプラン)を作成することとなった。
 しかし、高齢者を取り巻く環境はその目的を達成するのにかなり厳しい。老々介護、独居、痴呆、段差の多い日本家屋、一割負担の支払にも困る年金受給状態等、例を挙げれば際限がない。利用者それぞれの抱えている問題が多岐にわたり、その対応に追われ、怒涛のような日々で振り返る間もない状態であった。
 そこで3年目の今、ケアプランを作成した利用者の全体を見渡す必要を感じた。私が介護保険導入の平成12年4月に作成したケアプランの51名のその後を1年後、2年後について、検討を行ったのでここに報告する。
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2−12
介護保険制度の問題点等について 
 
 
  −大阪府の現状−
 
 
大阪府医師会
中尾 正俊
   
永井 博敏/古林 光一/大北 昭/植松 治雄
     大阪府医師会では、平成13年にケアプランと介護サービスに関する調査を行い、昨年の結果と比較検討した。調査対象は、大阪府内の44市町村、57郡市区医師会と36医師会立居宅介護支援事業者(回収率100%)。
 ケアプランに「問題がある」との回答は市町村では45%、医師会では80%で、作成時に主治医とケアマネとの連携に努めているのは市町村の方が多かった。居宅介護支援事業者では、主治医に「必ずケアカンファレンスへ参加要請」は3%未満だが、「必要時のみ連絡」との回答は前回より半減していた。民間事業者による介護サービスの「質に問題あり」との回答は、市町村で30%、医師会では50%以上であった。短期入所生活介護・短期入所療養介護が不足との回答が増えた。苦情への対応は32%の市町村でシステム化を済ませ、事業所ではその半分であった。
 ケアプランと介護サービスは「量から質へ」の転換が確実に進んでいる結果であった。
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2−13
介護保険制度における認定調査票のコンピューター入力による合理化
 
谷掛整形外科在宅介護支援センター
谷掛 駿介
 
 
前田 順一郎
     介護保険制度における合理化については、実施主体である市町村、介護サービス業者、利用者など関係者全てに考慮されなければならない。中でも合理化の中心はIT機器の利用である。介護申請から認定業務、介護サービス業者における帳票類、各介護サービス業者間や行政との連絡業務、介護報酬請求業務等において電子化により改善がなされてきている。介護認定審査における認定調査票の電子化については、既に加古川市での例を見るまでもなく日本各地で実施されているところであるが、演者の所属する奈良市では認定調査票は定型の紙に自筆、手書きを強制され作業の合理化がはなはだしく障害されているので、1年間に認定調査票を122件提出した実績を踏まえ、指定の用紙にデキストデータを印刷する形で合理化を実施できることを明らかにしたので報告する。さらに、電子化の一貫として共通のアプリケーションを使用することについてのメリットを説明する。
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