「人みな、生きて死ぬ」(南医師会から市民の皆様へ)

「日本プライマリ・ケア学会第16回近畿地方会・ウェブ抄録集」

ランチョンセミナー    
      「PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)とそのプライマリ・ケア」  
  −在宅現場の問題を中心に−
 
総合病院国保旭中央病院内視鏡外科部長
永井祐吾
         
   

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)が日本ではじめて施行されてから20年が経過し、すでに従来の外科的胃瘻造設術と同じ診療報酬点数が認められている。
 内視鏡専門医との協力で、腹壁を介した内視鏡の透光部位を穿刺針で直接刺入、これをガイドに胃瘻を留置する方法で、切開・縫合など基本手技を修得した外科医でないと施行できない外科的胃瘻造設術に比べ、慣れれば10分程度で容易に施行でき、経口摂取困難な患者さんの経管栄養ルートあるいは切除不能進行癌などによる消化管通過障害に対する減圧を目的として、増加の一途をたどっている。しかし、PEGの普及に伴い偶発症の発生も無視できない問題である。
 PEG造設時見られる偶発症としては、内視鏡挿入時の無呼吸、食道損傷、誤穿刺、腹腔内出血などがあり、増設後早期に見られるものとして、自己抜去、自然抜去、瘻孔周囲炎あるいは周囲壊死、皮膚潰瘍などが見られるが、多くは導入初期に発生しており、PEG造設医および管理スタッフがこれからの発生原因を熟知した上で、慎重に対処すれば未然に防止できるといえる。
 一方、PEGが安全に留置できたとしても晩期合併症として、バンパ一埋没症候群、カテーテル逸脱、幽門あるいは十二指腸閉塞、横行結腸瘻、カテーテル閉塞、瘻孔周囲炎、不良肉芽、胃潰瘍などがあり、さらに経管栄養に伴う下痢、胃食道逆流、誤嚥性肺炎、胃排出能低下、カロリー過剰・欠乏、微量元素欠乏などの発生が見られる。
 造設直後を除けば、多くは長期滞在型施設あるいは在宅医療および介護従事者の方々にPEGの管理をお願いすることになる。管理を担当する医師および介護従事者にはこれらの誘因と発生時の対処法を十分理解していただき、介護を担当する家族への説明・指導を十分に行っておくことが重要である。さらに、万が一対処困難な偶発症に遭遇した際、速やかに受け入れてくれるPEG造設施設との連携が必要となる。
 すなわち、患者にとって最良のPEG管理を提供するためには、PEG造設施設、在宅管理支援施設や介護施設が十分な連携とチームワークで患者情報を共有し、誤った管理によるトラブルを回避することが重要であると考える。